【まず「虎の子」から】
残念の一言に尽きる事例となった。この種の失敗事例は、一九九○年以降のバブル崩壊の過程で日常的に見られる。その代表的な例は、所有している複数の不動産を売却しようと決めたときに、利用価値が極めて高い、いわゆる「優良不動産」の売却を後回しにして、たいして利用価値もなく買い主もなかなか現れないような条件の悪い不動産を、「とりあえず売ってくれ」と不動産仲介業者に依頼するケースだ。これはインフレ時代の売り手市場における旧来のやり方であって、デフレ時代のやり方には逆行している。例えば、都心部にある利用価値の高い優良不動産を価格査定してもらい、五億円の評価を得たとする。一方、利用価値の低い郊外の土地を査定してもらったところ、三○○○万円の評価となった。すると、多くの売り主はとりあえず郊外の三○○○万円の土地から売却をしようとするのである。三ケ月経っても買い主は現われず、やがて六ヶ月、一年と過ぎていく。その間に都心部の五億円と評価された不動産でも、四億円あるいは三億円と価値が下落してしまう。このデフレ時代には時間のロスは資産のロスを意味する。現在の不動産は「魚」と同様だ。釣り上げて市場に出荷したときから鮮度が落ちる。価値は時間とともに低下していくことになる。同じ不動産でも、デフレ時代とインフレ時代では取り巻く環境が全く逆の状態になっている。売買の手順も当然のことながら変えていかなければならない。【高く買ってくれる】都心部にあるビルでも、店舗でも、同じように隣地を購入すれば何かにつけて利用できる。店舗として拡大もできるし、駐車場用地としても価値ある存在となることは間違いない。